「我々の任務はヘンドリクスの計画の阻止だ」
イーサンの口から語られる事実は、に頭痛をもたらした。
長官は死んだ。
ゴーストプロトコルが発令され、IMFはその存在を消し、イーサンのチームに残されたのはセーフハウスのわずかな装備と彼らがクレムリン爆破の首謀者だという事実だけだ。
「コードを奪ったサビーヌ・モローが三十六時間後にドバイのブルジュ・ハリファに入る。 コバルトの部下のウィストロムもドバイに向かっている。おそらくモローからコードを買うためだ」
イーサンのヘーゼルの瞳が四人を見渡した。
「IMFが機能しない今、我々は何のサポートも受けられない。装備もここにあるのが全部だ。どんな作戦も任務外になる―― もしIMFが関与しない任務はできないという者がいたら今、申し出ろ」
はちらりとブラントを見た。現場のエージェントではない自身もかなり困惑しているのに、偶然巻き込まれたブラントはどう感じているのだろう。
彼は顔をあげ何かを言おうと口を開いたが、結局その口から言葉は出なかった。
だが、どうしようもないのだ。
任務に参加しないという選択をしたところでおそらく帰国も叶わないだろう。してもすぐに身柄を拘束されるのが関の山だ。
まさかこんなに長い時間現場に関わることになるなんて、は夢にも思わなかった。妙な緊張感がますます頭痛を酷くさせる。彼女は眉間のしわを深くした。
「不安要素は残すな。ヘンドリクスの居所が掴めない以上、ウィストロムもモローも貴重な情報源だ。奴に関する情報を聞き出せ」
「それで、作戦は?」
「ホテルでウィストロムがモローから発射コードを買う―― が、その前にコードを偽物にすり替える。ウィストロムは捕えずに泳がせてヘンドリクスの居場所まで案内させるんだ」
「楽勝だな」
ベンジーが言った。
「ジェーン、君がモローの偽物に化けてウィストロムに偽物の発射コードを売るんだ。 で、その後をつける」
「それで、モローからはどうやって本物を?」
「モローを殺して奪う」
は鋭くジェーンを見た。やはりジェーンとハナウェイは恋人だったのだ。少なくとも、お互いを想う合う関係ではあった。
「そう、手際良くね」
ベンジーの少し軽い声が聞こえ、はジェーンから視線をずらした。
彼女は復讐を願っている。このまま任務に参加させてもいいのだろうか? 現場の諜報員でなくても、私情が挟まった任務が普通より難しくなることくらいはわかった。
「手際良く?」
「あー……でも、モローも情報源だ。だろ? 俺はただ思いつきを……イーサンが不安要素を残すなって言ったからさ」
「ウィストロムもモローも泳がせる」
イーサンはきっぱりと言った。
「ハナウェイの仇は―― ヘンドリクスの計画を阻止してからだ」
イーサンが自分の方を見た気がした。だがジェーンを見つめていたようにも思う。準備をするように告げられ、自分の荷物をまとめ始めたはしかし、ブラントが自分を見ていたことに気付かなかった。