#12

 イーサンは独りで行動するつもりなのだと誰もが思っていた。
 それでもイーサンは再びチームの助けを求め、そしてそれがヘンドリクスの計画を止める最後のチャンスだった。

 飛行場で彼がブラントを問い詰めなかったとき、は少しほっとした。今はまだ任務中だ。それに告白が原因で誰かに何かが起きたらきっと耐えられない。

「大丈夫か?」

 飛行機に乗る直前にイーサンに声をかけられ、は振り返った。

「えっ?」
「泣いてただろ」
「あ……そうね、わたしは大丈夫」

 改めて指摘されると気恥ずかしくて、は頬を染めた。

「そ、それより……わたしよりジェーンをフォローしてあげて。きっと自分を責めて……落ち込んでると思うから」
「僕が?」
「チームリーダーだし……深い意味はないけど、あなたがフォローするのが一番いいと思うの。その……大事な人を失ったから……」

 誰、とはは言わなかった。イーサンならそれだけ言えばわかってくれるだろう。

 イーサンからそれぞれの役割分担を聞かされ―― は当然裏方だった―― ミーティングをする前にはジェーンとパーティーで着るドレスを選んでいた。

「これがいいんじゃないかしら。あなたの肌の色にとても映えるし……靴はゴールドにして……」
「……さっきはごめんなさい」

 不意にジェーンが言った。

「何が?」
「わたしとブラントが言い争ってなかったら、あなたに飛び火することはなかった。あなたがブラントに責められることなんてなかった」
「ジェーン……いいのよ」

 はちょっと笑顔を見せた。

「あの時はみんなピリピリしてた。仕方なかったのよ」
「でもあなたブラントのこと」
「いいの」

 ジェーンの肩をそっと撫で、は自分のドレスを選ぼうと視線を下ろした。

「ありがとう、
「ドレスはこれでいい?」
「ええ、そうね。似合うかしら?」
「大丈夫よ。素敵だわ」

 イーサンがジェーンを呼びに来た時、彼がに微笑んでくれたので、は後は彼に任せることにした。

 あとは自分のドレスについて悩むだけだ。

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