第四章
悪意なき暴言

 ホグズミード週末と言ったら、ハロウィーンやクリスマスの行事のように、ホグワーツの生徒たちの心を浮き立たせる出来事でしょう。しかし、リリー・エバンズはまるでお葬式でも来たかのように、大きな溜息を1つつくのです。
 何しろホグズミード週末があるたびに、大嫌いなジェームズ・ポッターが、自分をデートに誘ってくるので、リリーはそれに心底うんざりしておりました。

「やあ、エバンズ」

 そして今日もまたやってきたジェームズを、リリーは片方の眉毛をちょっと上げて睨むように見ました。

「今週末は、ホグズミード週末だね」

 「そうだったかしら」と、リリーは冷たく言いました。何度誘われたって、リリーはジェームズなんかとホグズミードに行きたくはありませんでした。

「一緒に行かない?」
「行かないわ」

 ジェームズは心底がっかりとしたように肩を落とし、リリーを見ました。しかし、彼はこれで引き下がりませんでした。いつもはそうしますが、やはり彼女とホグズミードに行きたかったのです。

「2人きりが嫌なら、他のやつも誘っていいよ。君の友達とか……」

リリーはすまして鼻を鳴らしました。

「そ、そうだ! シリウスも誘おう! あいつ、最近彼女ができたから……」
「ブラックに彼女がいるなんていつものことだわ」
「あー、まあ、そうだね……それに、今回はよりにもよってだなんて、君も一緒に行きたくないだろう?」

 半ば冗談交じりに、言ったつもりでした。リリーは大きな音を立てて立ち上がり、きつくジェームズを見据えました。

「何ですって?」
「え……?」
が何ですって? あなたも他のみんなと同じで、のことを悪く言うの?」
「だって、彼女は……」
「あの子は何もしてないわ! 見た目がどうこういうのなら、見た目なんてみんな違うじゃない!」

 リリーの言葉を、ジェームズは半ば呆然として聞いていました。リリーはひどく怒っています。

「みんながそうやって意味も無く彼女を悪く言うから……だからはみんなを避けるのよ!」

 リリーはそれ以上何を言っていいのかわからなくなって、パッとその場からかけていきました。ジェームズは追いかけることもできず、リリーの言っている言葉の意味を理解することもできず、ただただそこに立っているのでした。

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