月末のリリーの誕生日を終え、シリウスはからリリーがプレゼントをとても喜んでくれたという報告と、買い物に付き合ったことに対しての2回目のお礼を受けた。
はとても嬉しそうだった。そしてシリウスは、2週間後に迫ったバレンタインでをそれ以上に喜ばせたいと思っていた。
「ムーニーはどうするんだ?」
「バレンタインのこと?」
シリウスがもう終わらせてしまった課題をやっているリーマスは少し視線を上げてシリウスを見た。形のいい眉を寄せて悩むシリウスの表情はやっかいなレポートをやっている時さえ拝むことはできないだろう。
「カードでも贈るよ」
「他には?」
「どうだろう? でもルナがそれ以上するなって言うんだ。あとは一緒にいられればいいって――」
「あぁ―― たぶんもそう思ってるよ」
座っていた肘掛椅子に身を沈めて、シリウスは考えることを放棄した。だって全く同じことを言うに違いない。それでいて、彼女は自分に特別な物を用意してくれるのだ――。
「でも僕が何かしたいんだ」
「他にプレゼントを贈るとか?」
「この前ホグズミードに行った時、彼女にプレゼントしたんだよ」
「バラの花束でも贈ったらどうだい? 君にならお似合いさパッドフット」
別の声にシリウスとリーマスは同時に顔を上げた。
「プロングズ」
「ケンカするなら部屋に行ってくれるかい」
シリウスの眉間の皺が一層深くなったのを見て、リーマスは素早く言った。
「エバンズにやれよ」
「エバンズはバラの花束で喜ぶような女の子じゃないんだ」
「だってそうさ」
「パッドフット、それより君は他の女の子たちから贈られてくるカードをどうするか悩んだ方がいいんじゃないか?」
「何?」
「毎年君の所には山のようにカードが贈られてくるじゃないか。もっとも今年はあんなことがあったんだし、去年よりは少ないだろうけどね―― また薪の代わりにするのかい?」
シリウスは顔を顰めた。すっかり忘れていた。シリウス自身には理解できないことだったが、毎年バレンタインやクリスマスには今まで名前も知らなかった女子からプレゼントやカードが贈られてくるのだ―― シリウスはいつもそれを暖炉に放り込んでいた。
もしがそれを見たら―― シリウスは考えた。はあまりいい思いをしないだろう。ジェームズの言うとおりだ。に見つからないようにきちんと処分しなければ。
「ムーニー、君はどう思う? 僕らはもう6年生でホグワーツにいる間にバレンタインはあと2回しかないんだ。僕はエバンズと付き合いたいんだよ」
「君が君自身の態度を改めればいいんじゃないかい」
リーマスは課題をやる手を止めた。作業は進みそうになかった。
「彼女は君の軽はずみな言動が気に入らないんだからね」
「そういうのじゃなくて、バレンタインにできることさ」
「つまり君はそこまで辿り着けていないってことさ、プロングズ」
「黙れよパッドフット」
「やめなよ。それよりパッドフット、は君と1日一緒にいられれば喜ぶと思うよ。はずっと君が好きだったんだからそれにもっと報いてあげるべきだ。がとっくに君を好きじゃなくなっていたら、君が自分の想いに気付いても報われてなかったわけだし」
「それは……そうだな」
自分がへの想いに気付いていてもが自分のことを好きじゃなかったら―― そう思うとぞっとする。あんな風にホグズミードに一緒に行くこともなかったし、ホグワーツで毎日寄り添って歩くこともなかったのだ。